令和2年 最優秀賞 井上 葉子
(令和2年8月25日(月)寄稿)
令和の時代となり始めての新春舞踊大会に於いて、このような身に余る光栄な賞をいただきました事、誠に有難うございます。
受賞の知らせを受けました時は、驚きしかありませんでした。
あれから今日まで、世の中の全てが苦しんでおられ、多くの方々が、当たり前に出来ていた事が奪われてしまう不安や焦りの中で時間が流れて、ようやく少しずつ動き出す兆しが見えてまいりました。
あまりの出来事に、今年の1月の新春の舞台が遠く感じられる中で、ふと、今までの道を思い返しております。
私は、3歳で当時の井上三千子師、 現五世八千代師に師事致しましてより、憧れの京舞の道を進んでまいりました。
師から厳しくも、温もりがあり、細やかにご指導していただける時間は、私にとりまして、幼少期より変わらず何物にも代えがたいものでございました。人生のあらゆる経験と重なり、舞と共に成長したい、との強い思いで、新春舞踊大会に挑戦させていただきました。
京舞という守られた環境の中から一歩外へ出て、沢山の先生の前で舞う事が出来る舞台への参加は、緊張と不安でしかありませんでしたが、師匠に背中を押して頂きました。本当に有り難い事です。
今、改めて、人から人へ伝承する伝統芸能に携わり、人が繋がる大切さを見つめ直しております。
どんな状況でも、生きていかなくてはなりませんし、人と共に生きていく、その先に楽しい舞台芸能が成り立つと、強く感じました。
受賞者として、本来のご挨拶から、かけ離れた言葉を並べましたが、ある意味で記憶に残る年の受賞をさせていただきましたことは、一生忘れる事の無い、貴重な経験です。
今後も、京舞の道を、私らしくゆっくり足跡を残しつつ歩み、尊敬する八千代師、そして、私を姉と慕ってくれる井上安寿子さんと共に前を向いて、京舞井上流に貢献出来ますよう、精進してまいりたいと存じます。
今後とも末永く、よろしくお願い致します。
有難うございました。