令和4年 文部科学大臣賞 西川 箕乃三郎(にしかわ みのさぶろう)

(令和4年6月27日)

この度は、身に余る賞を賜りまして誠にありがとうございます。

大会当日審査をして下さった諸先生方、また流派内外の先輩方、そして常日頃より、温かくご指導下さる師匠、西川箕乃助先生に心よりお礼を申し上げます。

東北の片田舎で生まれた私は、どういう訳か小さいころから歌舞伎や踊りが大好きで、 小学 2 年の頃に母親の勧めで、日本舞踊を習うことになったのが、この道に入ったきっかけでした。決して裕福ではない家庭でしたが、それから様々な舞台や経験を積むことが出来たのも、今は亡き父と、いつも陰から見守り支えてくれる母のおかげと感謝しております。

大学進学のため上京し、早稲田大学の日本舞踊研究会で現師匠、箕乃助先生と出会うことになるのですが、当時は自分が西川流に入るとは夢にも思っておりませんでした。と言いますのも、その頃の私は自分の芸に慢心し少しのぼせ上っていた所がありました。しかし、とある舞踊会で箕乃助先生の素踊りの『玉屋』を拝見し、日本舞踊の世界は自分が思うよりもっともっと深い何かがあるのではないかと思うようになり、意を決して大学卒業を目前に西川流の門を叩くことになりました。

それからのお稽古では、とにかく自分の踊り方の概念を削り落とすこと、小さくまとまらず大きく踊ること、基本のきの字から徹底的にご指導いただきました。「あなたは西川流の匂いがしない」「師匠の踊りをもっとよく見なさい」と周りの先輩方からも様々に助言を頂き、その言葉の意味をずっと考えながら日々お稽古に励んで参りました。

そしてこの新春舞踊大会においても、同世代の舞踊家の方々の芸を目の当たりにし、自分も負けないように頑張らなくてはと焦る私に師匠は、「一年や二年で何が変わるわけでもない。基本をしっかりやりなさい」と言ってくだり、何か心が軽くなったのを覚えております。この新春舞踊大会で学んだことは、芸道というものは、その場の小手先の技術ではなく、結局は一日一日の積み重ねが大切だという事でした。今回の経験を糧とし、多くの 先生方、先輩方、応援して下さる全ての方に感謝の気持ちを忘れず、これからも自身の芸道を懸命に歩んで参りますれば、皆様にはこれまでと変わらぬ厳しいご指導、ご鞭撻の程 伏してお願いを申し上げます。